第二章 惑星降下

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スメラギはその後も順調に進み,デブリ帯を抜けた.すると,それまではハッキリと捉えることの出来なかったランソルの全容が明らかになる. それは地球と良く似た,緑溢れる惑星だった.両極に氷が張っているようには見えず,全体的に温暖な惑星であるように見えた.更に青い海と白い雲があることから,惑星上で水が循環していることが分かる.何より驚いたことが,宇宙からでも一目瞭然な規模の都市が築かれていたことだ.ERICAは思わず船体に備え付けられた望遠鏡を動かし,その都市を覗き見る. 都市は茶色い材料が使われており,上空からでも蜘蛛の巣のような網目状になって地表を覆っているのが分かる.宇宙空間に宇宙船の類は見られないため,その技術レベルはこちらよりも低そうだ,と彼女は思った.更に彼女は一つ一つの建物に焦点を当てていく. 彼女はまず網の中心部の建物に焦点を当てた.宇宙からではよく分からないが,それは複雑な構造をしているようで,建物の至るところに均一でない影が出来ている.ジロジロと左から右へ,ERICAは嘗め回すようにその建物を見ていく.建物に関しては、何か複雑な構造の建物という以外の情報は得られなかったが,しばらく見ていると彼女の視界を横切る一人の少女のような生き物に焦点が合わさった.その生物は長い髪のようなものを風に靡かせ,何かを見つめていた.この距離では解像度が足りなく,鮮明にそれを捉えることが出来ないが,明らかに生物である何かを発見し,ERICAは自分の胸が高鳴るのを感じた. 「ちょっとこの映像見て見て!動いてるよ!」 彼女は自分が見たものを映像として保存し,艦内ネットワークにデータを垂れ流す.宛先を指定せずにデータを流すことで,ネットワークに接続している全ての機械がそのデータを参照できるようになるのだ. 「ホントだ.こんな建物作ってるくらいだし,交渉出来る程度の知能もありそう」 これにはRINも驚いたらしく,操縦幹から意識を放し,目を丸くしながら映像を見ていた. 「ファーストコンタクト,ERICAで大丈夫かなぁ・・・・・・」 「なんと失礼な!?」 相手が知的生命体である可能性が高まったことを受けて,KOTAはファーストコンタクトが浮き足立ったERICAで大丈夫なのか心配になるのだった.
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