第二章 惑星降下

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二人の身長は大きく変わらないのだが,その搭載AIの調整の違いから,二人の印象は大きく異なる.RINはERICAと同じように彼女の髪を撫で付けた.その様子から,二人が同じように彼女を愛でるのは,同じようプログラムされているからなのかもしれないと彼女は考えるのだった. そのような自身の可能性を否定するような推論を行なうと,それを認めたくないが故にそのことについての再推論を別プロセスで実行し続けてしまうため,通常より彼女の処理速度が低下してしまう.それは彼女のパフォーマンスにモロに反映される. 「ERICA?レスポンスが落ちているけど,何か悩み事でもあるの?」 「あっ!ううん,さっきの禅問答の続きだよ」 「ふぅん,ほどほどにしなよ?考え事ばかりしていると,この前みたいにニューロンネットワークが収束しなくなる原因になるんだからね」 ERICAは極めて明るく返答しようとしたが,その一瞬の間はKOTAに感づかせるには十分すぎたようだ.ERICAはつい数十時間前にもニューロンネットワークでの処理が収束しなくなる不具合を起こしており,その原因は解のない答えを算出しようとしているからだと結論づけられている,このエラーはERICA以外のアンドロイドには発現しておらず,また別宙域で活動中のERICAにも発現していないことから,このERICA特有のエラーであると考えられている. ニューロンネットワークでの処理が収束しなくなるとアンドロイドは行動不能に陥る.これは次実施する行動を決定出来ないまま処理が終わらなくなるためだ.それの解決方法は見つかっておらず,ニューロンネットワークを再構築することで一時的に症状の緩和を行なっているに過ぎない. どうやらその状態に陥った時まるで死んだように突然動かなくなったらしく,他のアンドロイド達が「自分達もあのようになってしまうのかもしれない」と酷く怯えてしまったため,今後は複雑なことを考えないようにして欲しいとKOTAから言われていた.
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