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――大気圏突入ユニットFU-朱雀、接続
――ERICA 姿勢制御パッケージをユニットFU-朱雀に変更
――知覚センサ系統をユニットFU-朱雀に変更
――接続確認テスト、1番から3220番までを実行
――異常なし
ERICAの頭の中に文字情報が映される。その文字はただのシステムログであり、彼女の身体モジュールから送られてくるものであるため、彼女の思考とは何ら関係のないものだ。ERICAは惑星降下のために大気圏突入のための降下ポッドと接続を行っていた。一通りのログを吐き終えると、ポッドに設置された視覚センサから映像情報が入ってくる。しかしそこには視界一杯に広がるLUCAの顔があった。
「うわっ!びっくりした」
「えりかおねーちゃん?」
彼女は小首を傾げてポッドをコツコツと叩く。今やこのポッドこそが彼女の身体であり、ポッドに触れることはすなわち彼女に触れることになる。パラメータ的にはくすぐったいという状態になるため、あまり触ってほしくないというのが本音だ。
「そうだよ。センサ壊れちゃうからあんまり叩かないで。ほら、ここは危ないから向こうに行ってなさい」
そう言って「向こう」を指そうとするが肝心の腕がないことを思い出す。仕方なく彼女は足元に付けられたスラスターをパタパタと上下に動かす。LUCAはスラスターに興味を持っているものの、離れる素振りを見せなかった。
「……わたしもあそこに行ってみたい!」
「きっと行けるよ。LUCAが行っても安全な場所なのか確認してくるから、ここで待ってて」
視覚センサを覗き込むようにして彼女は言った。そのキラキラした目を否定の言葉で濁すのは気が引けた。
「……うん。ここで待ってる」
LUCAは少ししょんぼりしたような表情でその場にしゃがみ込んだ。そのふわふわの髪が周囲に放射状に広がる。
「接続、正常に終わったよ。RINは?」
ERICAは大気圏突入ユニットとの接続が正常に行われたことを報告する。このユニットはFU-朱雀と呼ばれており、大気圏突入時に赤い尾を引くのが朱雀のようであるからそう呼ばれている。見た目はただの丸い降下ポッドであり、羽が生えているわけではない。
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