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スメラギはランソルの周回軌道上に到着していた。ここから地上へ向けて朱雀を射出することで惑星探査を行う予定だ。彼女はその降下準備のため格納庫へ来ていた。
格納庫には彼女達の他にRINとSYO、YUKIとYUKARIが居た。格納庫は空間としては広く、大量の整備ロボットが設置されている。SYOが一人でそれらを操っているのだが、現在は制御ユニットに乗り込んでいるためその姿を見ることは出来ない。
「こっちも正常に準備完了。いつでも行けるよ」
「OK。外でYUKI達の準備を待ってくれ」
SYOがそう言うと、格納庫の扉が大きく開く。ERICAの足元が動き、彼女は外の世界に運ばれていく。ふと後ろを見ると、しゃがみ込んだLUCAが手を振っているのが分かった。振り返す腕はないため、彼女には音声通信を送る。
「じゃあね。行ってくるよ」
「うん、またね」
眼下に迫る青い惑星は、黒い着物に施された螺鈿のようにキラキラと輝いていた。彼女の肌は絶対零度の宇宙空間に晒されるが、宇宙には熱を伝えるものがないため、不思議と寒さは感じない。ただし数値上の温度はマイナス273度であり、アンドロイドはそれを寒いと感じるように設定されていた。
「ひえー、やっぱり寒いね。そっちはどう?」
「こっちは陽が当たるから熱いよ!っていうか早くしてくれないと熱暴走しちゃうよ!ちょっとSYO!まだなの!?」
ERICAはスメラギの影、つまりエシャルトからの日差しが遮られる場所に設置されていた。しかしRINが出されたのはその反対側、直接日差しが当たる側だったのだ。宇宙空間には熱を伝える物質が存在しない。従って熱を放出することが出来ないため、ポッド内の温度はどんどん上昇していくのだ。スメラギの艦内は冷却水を循環させているため、一方が熱くても、もう一方で冷やされるように設計されている。しかし艦外へ出てしまうとその恩恵は無くなってしまう。
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