第一章 新世界への船出

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全てのテスト項目を終えた彼女はブリッジへ向かう。スメラギの艦内には彼女以外にもアンドロイドが搭載されている。先ほど彼女へメッセージを送ってきたのは艦長のKOTAだ。彼はおかっぱ頭をした少年のような外見として作られた、第三世代型のアンドロイドだ。ERICAは第一世代のアンドロイドであり、AIの学習時間と学習領域の幅は次世代のアンドロイドより遥かに豊富であるものの、その身体的なスペックや学習効率は彼らに劣る。故に未知の事象に対応の効く彼が艦長として任命されている。 彼女は艦内を歩き、ブリッジへの扉を開く。中にはKOTAと他の何人かのアンドロイド達が計器を前に座っていた。一つだけ空いた席があるが、そこはERICAの席だ。 「KOTA、おはよう」 ERICAは自然な笑顔を作って、ブリッジを入ってすぐの所に座るKOTAへ挨拶をする。彼もまた笑顔で挨拶を返す。 「おはようございます、ERICA。エシャルトは見えましたか?」 「うん、初めて見たかも。すごく綺麗だった。ランソルへはあとどれくらい?」 「もう間もなくです。それより大発見です!ランソルに向けた望遠レンズが、知的生命体らしきものの姿を捉えましたよ!」 彼は人間のように目を輝かせ、興奮気味に話した。ERICAも初の地球外知的生命体と聞き、胸の奥からこみ上げてくるものを感じた。 「え!見せて見せて!どんなの!?人型!?」 ロボットなのに彼女はつい人のようにはしゃいでしまう。そんな彼女のはしゃぎ様を見て、周囲のアンドロイド達もついクスッと笑ってしまう。その中の一人、クリっとした黒い瞳を持った黒髪のアンドロイドが彼女へ映像を送る。 ――メッセージを受信しました 「今送りましたよ。人型……と言っていいんでしょうかね」 「ありがとうASUHA!どれどれ……」 ASUHAは第二世代型のロボットである。ERICAとの差別化のために、彼女より大人びた喋り方をするようにAIが調整されている。 ERICAは期待に胸を膨らませながらメッセージに添付された映像ファイルを開く。彼女がそのファイルにアクセスをすると、視覚センサから入る情報がファイルの映像に切り替わった。 そこには二足歩行をする何かの熱分布が捉えられていた。それは複数体いるようで、街のようなコミュニティを形成しながら生活しているようだった。距離があるからかハッキリと捉えられていないが、何らかの生命がいる可能性は限りなく高いと言えるだろう。
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