第一章 新世界への船出

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「うおー!すごい!夢が広がるね!宇宙すごい!」 「君とRINには戦闘用アンドロイド達と一緒に降下してもらうよ。構わないかい?」 「うんうん!勿論だよ!任せておいて!」 彼女は二つ返事で了解する。アンドロイドには大きく二種類ある。一つは戦闘用アンドロイドで、名前の通り戦うために作られたものだ。もう一つが汎用アンドロイドで、こちらは人の生活の様々な課題を解決するために作られた。彼女は汎用アンドロイドだ。大抵のことはやれるように作られているため、ほとんどの仕事は彼女に回ってくる。憂鬱な仕事もあるが、彼女は今回の仕事に非常に気乗りしていた。何といっても地球外知的生命体とのファーストコンタクトを取れるのだ。これほど心躍る仕事もそうないだろう。彼女は小刻みにステップを踏みながら自分の席へと向かう。 彼女は席に座ると,自分の手首から接続端子を引き出し,それを計器に差し込む.カチリという音を立てて計器とERICAは繋がった.ケーブルを通してスメラギに設置されたセンサ類からリアルタイムに計測データが送られ,頭の中に膨大な情報空間が広がる.彼女はその値を参照しながら周囲の環境を把握していくが,それはまるで自分が艦そのものになったような感覚だ.データを解析した結果,ランソル付近の宙域にデブリ帯があることが分かった.彼女はそれを報告する. 「針路上にデブリ帯,突入まで1200秒」 「分かった.針路そのまま.デブリ帯突入120秒前から逆噴射による減速を開始」 「コントロール了解」 KOTAの指示に答えたのは,RINという金髪を縦ロールにした青い目の持ち主だ.彼女はKOTAと同じ第三世代型アンドロイドで,少女のような外見をしている.スメラギでは艦の操舵を任されている.操舵幹は大きく,小さな彼女にはサイズが合っていないが,それを苦もなく使いこなしている. アンドロイドは身体に設置された接続端子を機器に差し込むことで,直接制御信号を送って機器の操作を行なうことが可能なのだが,RINは実際に操舵幹を触りたいという理由からそれを行なっていない.作業効率は端子接続を行なうことより下がるのだが,自我を獲得するために人間のように身体を使った世界への干渉は推奨されている.これは人間を真似ることで,いつか人間のように振舞えるようになる,すなわち自我を獲得出来ると考える説が存在するためだ.
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