第一章 新世界への船出

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「デブリ帯の突破予想時間,243時間」 「ランソルまでの予想到達時間は?」 「およそ272時間」 「分かった.ASUHAはERICAと交代して休息に入って」 KOTAにそう言われ,ASUHAはブリッジを後にする.アンドロイドも熱暴走や充電のために休息を取る必要がある.ERICAに搭載されたバッテリーの連続起動可能時間は72時間程度であるため,ランソルに着くまでの間に何度か休息を取らなければならない.それはKOTAとRIN以外のアンドロイドも同様だが,彼らは現在直接電源に接続されているため,充電を行なう必要がない.彼の腰部から太いケーブルが伸びているが,それが電源ケーブルである. ERICA達にも同様のものを装着するための穴が用意されているが,ケーブルは重く,ボディの機能性が下がるため,滅多に装着することはない. 「ERICA,SYOに降下ポッドの整備状況を聞いてくれる?」 「はーい」 KOTAから指示を受けて,彼女はSYOと呼ばれるアンドロイドを通信に呼び出す.アンドロイド同士の通信は,各個体に割り当てられているアドレスに通信開始データを転送するだけで実現可能だ.彼女はSYOのアドレスをデータにセットし,それを艦内ネットワークに流す.彼がこれを拾えば通信が開始される. 「おうERICAか.どうした?」 彼女の視界にオレンジ色のショートヘアをした青年が映し出される.彼はSYOというアンドロイドでASUHAと同じ第二世代型だ.スメラギではメカニックを担当しており,格納庫で戦闘用アンドロイドや,船外活動用の追加モジュールの点検を行っている. 「私達の降下ポッドの整備状況を教えて欲しいんだって」 「いつでも出せるのは3つまでかな.残りはもう少し整備する必要があると思う」 「それだけあれば十分かなあ.YUKIとYUKARIは動かせそう?」 YUKIとYUKARIというのはスメラギに配備された戦闘用アンドロイドのことだ.彼らにはERICAと同じタイプのAIが搭載されているが,戦闘に特化した学習データを用いてニューロンネットワークを構築しているため,彼女達と同じように様々なことが出来るというわけではない.そのため誰かが整備を行なう必要があるのだ.それをSYOが担当しているのである.
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