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たまには、そういうこともあった。
それは、時には校長だったり、あるいは理科室の薬品関係の業者だったりと、稀に放課後にも理科室への来訪者はあるのだ。
しかし、門脇と知己のお二人様タイムを邪魔する者は、誰であろうと、もれなく不機嫌極まりない彼の視線を浴びることになる。
今回も、初めは明らかに東陽高校職員ではない将之の様子に「業者の人?」と思ったのだが、それはすぐに
「将之……」
と思わず出てしまった小さな知己の呟きを聞きつけて、ただの通りすがりの人ではないことを、敏感な門脇は察した。
(呼び捨て……)
自分より少し後方に位置する知己をかえりみて、もう一度将之に向き直る。
パトランプがフルに回り、サイレンけたたましい警告音さえ聞こえそうな勢いで、門脇の直感が
(こいつは……ヤバイ奴)
と告げている。
「君こそ、誰だ?」
さっきからずっと睨み付けられて、全くいい気がせずに将之は、憮然として聞き返した。
「高校に高校生がいるのは、ごく自然なことだと思うけど?」
「見たまんまをいうんじゃない。第一そんな事は聞いてない」
「名前を言えばいいわけ?」
「……そうなるかな。ついでに身分も」
「門脇蓮。東陽高校2年生」
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