21人が本棚に入れています
本棚に追加
/15ページ
菓子を買い、駐車場に停めてあるレンタカーに乗り、札幌まで帰る。運転はツカサだ。
「ふふ。助手席に彼女を乗せるって、あこがれだったんだ」
おれが彼女なのか。
発車前の突然の台詞に驚くも、同性の場合、どちらが彼氏彼女になるのか判らないので、黙っておく。むしろどうでも良い。
札幌に這入り、大きなとおりで信号待ちしているときだった。建物の間から、テレビ塔がちらりと見える。
「一実。今日は二人ともバイトがないだろ? 僕、ちょっと一実と行きたいトコロがあるんだけど、良いかい?」
「行きたいトコロ?」
「うん」
「どこ?」
信号が青になり、車が静かに進む。行先を告げず、それきり黙ってしまったツカサに、おれはなにかが始まったことを、無意識に感じ取っていた。
車は大学の方向へは行かず、脇道に逸れて行く。
〈了〉
最初のコメントを投稿しよう!