13.予兆

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13.予兆

 雨は凍えるような冷たさだ。シオンは濡れた前髪を払う。頭のてっぺんから爪先までズブ濡れになっている。  足元では枯れ草の合間から新たな芽が顔を出していた。萌える若葉を眺めていると、やけに胸が苦しい。  霞のような影が、今度は彼女の傍らに佇んでいた。宝石のような蒼い眼は、灰色によどんだ地平線を見据えている。耳を澄ませば、ソレは何か言葉を発しているようだ。しかし、シオンにそれらを聞き取ることはできなかった。  ソレが顔を上げたので、シオンもその先を目で追う。空を仰ぎ見ると、一面の厚い雲がどこまでも続いていた。
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