21.小休止

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21.小休止

 日の光が眩しい。シオンは唸りながら寝返り、目を擦る。また奇妙な夢をみた気がした。部屋は十分に暖かいにも関わらず、寒気を感じる。 「あら、ようやく目が覚めまして?」 「目覚めから、すでに疲労感が……」  聞き覚えのある口調に堪らず苦い顔をした。  ソファから体を起こすと、カーテンは開け放たれ、窓の外から明るい日差しが差し込む。向かいのソファへ腰かけるリアトリスは、優雅にティーセットを広げていた。 「まだ審議は続いておりますのに、呑気なものですわ」 「リアトリス、さんも……ずっとここで起きていたんですか……?」 「あなたと違い、私は上位の華族です。客間くらい用意されているに決まっているでしょう」 「じゃあ、どうしてここに……?」 「アーネスが昨夜からあなたのために口利きをして回っているのです。その間の子守りを、私が押し付けられたのですわ」 「お休みのところ失礼かと思いましたが、お邪魔させていただきました。細やかですが朝食もご用意いたしましたので、どうぞお召し上がりください」  傍らから伸びてきた手が、シオンの前へパンやジャム、飲み物やサラダ、と。細やかとは思えない朝食を並べた。  シオンは横にたたずむクルスタを思わずまじまじと見上げる。給仕のエプロン姿だ。 「え、ええっと……」 「勘違いはなさらぬように。私はあくまであなたの監視です。アーネスのように慣れ合うつもりはございませんわ」 「でも、このパン……。まだあったかい……」 「クルスタが勝手に用意したものです。私の計らいではありません」 「ありがとうございます、クルスタさん」 「こちらこそ、眷属であるスフェノスがご迷惑をかけ、たいへん申し訳ございません、シオン様。お食事の前に顔を拭われますか?」 「あ、すいません……。何から何まで……」 「言っているそばから慣れ合うのはお止しなさい、クルスタ!」  クルスタから温かい蒸しタオルまで渡され、頭を下げるシオン。横でリアトリスが憤慨すると、クルスタは彼女に新しい紅茶を淹れ直してなだめる。  遅めの朝食は予期せず賑やかになり、シオンは温かいパンを頬張った。
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