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迷いなく自室の隣にある扉を開く。私はもう、なまはげの顔だ。悪い子を成敗しなくてはならない。
「ちょっと!」
犯人である弟は、ベッドに座って漫画を読んでいたが私の顔を見るなり、側にあったヘッドホンをつけた。
「見てからつけるな!」
それを乱雑に奪って、私は思い切り弟を見下ろした。身長は大分前にこされてしまっていたが、この体勢では私の方が上だ。
「何? ていうか、ノックくらいしてよ」
「お前が言うんじゃありません。無断で人のプリンを食べた人にプライバシーなんかないの!」
弟は面倒臭そうな顔をした。ついでにあくびまでしている。
「あのねぇ……私、怒ってるの」
「見れば分かるよ」
「もう! 謝って! 今すぐ代わりのプリンを買ってきて!」
こっちの怒りも知らず、涼しい顔の弟をクッションで殴り付ける。
「ちょっと、止めてよ。これからバイトなんだけど」
「バイトなんかクビになっちゃえ! 一ヶ月プリンに飢えろ!」
バシバシと殴り付ける自分の姿は、きっと野生に返っているだろう。その気迫に圧されたのか、弟が雑誌を盾にして宥めてきた。
「分かった分かった。帰りにちゃんと買ってくるから」
「三つね、三つ! 三つで百円のじゃ嫌だからね! 許さないから!」
「えぇ……」
若干 嫌そうな弟に、クッションで威嚇しながら睨み付ける。
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