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何も気にしていないかのように、彼女はココアのクリームを掬って自分の口へ運んだ。
「君ってメロンソーダ好きだよね」
「そう?」
「いつも飲んでる。ね、一口ちょうだい」
ねだる彼女の方へグラスを寄せた。ほんの一口だけ味見して、それが戻ってくる。
自分では意識していなかったが、言われてみれば何かとメロンソーダを頼んでいた。甘いものは嫌いだが、炭酸は好きだ。
けれど、以前はコーラとかが多かったように思う。
「気づいてなかったの?」
「うん。意識してなかった」
メロンソーダを頼むと、彼女は高確率で一口ちょうだいと頼んでくる。まさか、自分でも気づかない内にそれを望んでしまっているのだろうか。
彼女にねだられるのは、確かに嫌いじゃない。
「じゃあ、メロンソーダじゃなくて私が好きなんだね」
彼女が放った言葉に、心臓が強く射抜かれた。まさか、そんなに僕は分かりやすいのだろうか。
「──なんちゃって。そんなわけないよね」
楽しそうに笑う彼女は、急に追撃の手を緩めてしまう。振り回され続けるのも困るので、僕は笑って誤魔化した。
「それで? 君は魔法使いになったらどうしたいの?」
「女の子の場合は魔女よ。魔女」
「はいはい」
変な拘りすらある。きっと、一般的に言えばかなり面倒な女の子だろう。
だからこそ、こんなに可愛い見た目で恋人と長続きしないのだ。告白するのも振るのも、決まって相手の方だったと言う。
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