流れ星

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流れ星

 夜の澄んだ星空は、青空よりもずっと静かだ。  まん丸い月の輝き。チカチカと瞬く星達も、黒い天幕に散りばめられている。  昼の明るさを消した街並みは、まるで星空を映したようにキラキラと輝いていた。人工的ではあるが、その一つ一つに生活がある。  特に橙色の灯りは、見るだけで暖かな気持ちにさせてくれた。  この高台からは、そんな風に一面の景色が見渡せる。来るまでは少しかかるが、それでもこの一年と半年、何度も足を運んでしまっていた。  君が居なくなった初日。  そして、寂しくなる度に何度も。  そう、一人になって、一年と半年が過ぎていた。あっという間にも、気の遠くなるほどの時間にも思える。  ほんの少しだけ目を閉じて、君の笑顔を思い出し、再び眼前の幻想的な世界を見た。  その瞬間、音もなく空を流れた細い光の糸。それはあまりにもか細くて短くて、触ったら溶けてしまいそうな程だった。  流れ星だ。  それはたったの一瞬で、あ、と思った時にはもう消えてしまっていた。  願い事なんて決まっているのに。三回唱える暇もなかった。  それでも、私は心の中で祈ったのだ。  君に会えますように。君に会えますように。君に会えますように。  きっちり三回。心を込めて唱えた。  ルール違反ではあるから望み薄だけれど、普段から走り続けているから許してほしい。  最初は泣き続けたけれど、時間は待ってなどくれなかった。だから、私は泣きながらでも全力で走り続けるしかなかった。  自ら命を終えたら、楽になれる。そんなことは分かっていた。分かりすぎていたんだ。  それでも、私がそれを選ばなかったのは“もしも”の時に怯えたから。  もしも、死んでしまってから君に会えないと言われたら、どうしよう。  そんな恐ろしい絶望が過ったのだ。  それから騙し騙し、私は今日のこの日までを積み重ねてきた。  そろそろ奇跡が私にも降ってきてくれて良いんじゃないかな、なんて思うけれど、何の変化もない。  君が帰ってくるわけでもなかった。  さすがにいつまでも夜景を見るわけにはいかないので、私は名残惜しさを抱えながらも家へと引き返した。
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