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休日。なんとなく前から気になっていた街へ出掛けて、目的もなく一人で買い物を楽しんでいた。
何を見ても君を思い出してしまうけれど、もう泣かなくなった。希望を捨てることは辛いから、前だけを見て誤魔化す。
ふっと、通りすぎていく人混みの中で、見慣れた姿を見つけた。
彼は彼で、こちらを見つめてくる。
まさかと思って、自分から寄っていった。けれど、近くで見た姿は全く君とは違っていた。
やっぱり、ルール違反はダメらしい。
「びっくりした」
彼は、君とは違う声で言った。
「俺の探している人に似ていたから、一瞬その子かと思って。でも、違いました」
困ったように、君とは違う顔で笑った。
あまりにも自然に、私の唇から言葉が溢れていた。
「あなたも、ですか?」
流れ星。
ルール違反でも──ううん、ルールとは違うからこそ、この形で叶えてくれた。
この世界も、案外捨てたものではないのかもしれない。
単純な私は、そう思ってしまった。
今はまだ細い光でも、ずっとずっと待っていれば希望は流れるのだと知ったのだ。
いつか私は あの橙色の光を灯すようになる。そして、あの時の自分のような人の心を癒す光の一粒になるのかもしれない。
*END*
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