第1章

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「叔父さん、ちょっといい?」  エイコが係長室に入ってきた。 「どうした? 火星便の遅延で泊まる所がないのか?」 「それもだけど、私のカメラに変なものが写ってるの」 「見せてくれ」  ユウイチはエイコのカメラを見る。宇宙空間を写した画像だ。 「叔父さん、どう思う?」 「拡大して見ると…………宇宙空間に人が居る。宇宙服を着てない。マネキンじゃなさそうだな」  ドピュ二郎も係長室に入ってきた。 『ユウイチ、大変だよ。また事件』 「宇宙空間に人が放出されたか?」 『何で知ってるの!? ……犯人はユウイチ、あなたです!』 「叔父さんが犯人な訳ないでしょ、ポンコツ」 『ポンコツとはなんだ!? 僕は1ヨタバイトの超高性能ロボットだぞ!』 「ドピュ二郎、冗談はそのくらいにしてくれ」 『僕達がコットン・ミサキの事件を追ってる間に起きたみたいだね』 「また俺にやらせるのか? 勘弁してくれよ~」 『ユウイチって宇宙空間の作業ライセンスは持ってたっけ?』 「持ってないよ」 「…………私、持ってる」 「本当か? エイコ」 「仮ライセンスよ。実地試験はまだだけど、筆記と水中訓練なら」 『最近の生徒教育は発達してるね』 「しかし、姪に危険な真似はさせられない」 ――「話は聞かせてもらいましたよ。僕にも手伝わせて下さい」 「田中、お前はライセンスを持っているのか?」 「こう見えて、船外活動のライセンスあるんですよ」  田中は堂々とライセンスカードを見せる。 「田中、当面はデブリの心配はないと言ってたな。ブースター付き宇宙服で遺体を回収してきてくれ」 「分かりました。専用機ラウンジのゲートから行きます」 「頼む」 ――田中は規制線をくぐり抜け、専用機ラウンジに入る。AIポリスが10機くらい居た。アイドル殺人事件の裏付け作業をしている。  田中はゲートを通り、関係者以外立ち入り禁止の部屋に入る。ブースター付き宇宙服があった。パイロットスーツの様にスリムな宇宙服で腰の辺りにブースターが付いてる。  田中のウェアラブル端末が鳴る。ユウイチから通話だ。 「係長、何ですか?」 「田中、そっちはどうだ?」 「今、宇宙服を着るところですよ」 「ナビゲーションの確認は怠るなよ」 「はい。任せて下さい」 「必ず生きて還ってこいよ」
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