第1章

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 背広の男は観念したかのようにユウイチのボディーチェックを受ける。  財布が3つ出てきた。 「これは何? 足を洗ったんじゃなかったのか?」 「返すから」 「ドピュ二郎、この人を捕縛して」 「ちょっ、待て」  背広の男が逃げようとした時、ドピュ二郎の電磁ロープが手足に絡まり、背広の男は捕縛された。 「ドピュ二郎、AIポリスを呼んでくれ。この男を留置場にブチ込んで」 『りょ~か~い』 「勘弁してくれ~!」  ドピュ二郎はスリの男に馬乗りになる。 『逃がさないぞ、泥棒!』  ピピピピ。ドピュ二郎は約1キロメートル離れた、AIポリスの交番に連絡を入れる。  エイコがユウイチの元へ行く。 「叔父さん、事件は解決したの?」 「全然」 「そう……ラウンジでは古い映画をやってるのね」  ユウイチはスクリーンを見る。 「おっ! ギャンブリンライフか。懐かしいな」 「知ってるんだ」  ラウンジにはミニシアターが併設されている。宇宙船の発着は遅れて当然という感じだ。待ち時間は酒や娯楽で潰すもの。 「勿論。フォールンエンジェルアローズ・ルシファーの話は最早伝説だよ」 「何それ、知らない」 「若い子には分からんか」 『僕のデータにも入ってないB級SFだね』 「こら! 作者に失礼だろ」 『フフフフ』 「ねえ、叔父さん。高級ラウンジって誰でも入れるの?」 「特に決まりはないよ。昔は警備員が見張りをしてたけどな。人件費削減だ」 『ユウイチ、また高速演算処理したところ、シャッターから出て行ったのは多分、男だよ』 「おそらく、ソイツが犯人だ。マスターもスリの男も返り血を浴びてない。心臓を一突きして得物を抜いてる。おそらく、怨恨だろうな。追いかけるぞ」  ドピュ二郎は防犯カメラの映像を洗いながら真犯人を追いかける。ユウイチとエイコはドピュ二郎の後を歩く。入れ違いで5機のAIポリスがラウンジへ入って行った。  ドピュ二郎の歩行速度が段々速くなってくる。 『2人とも、急ぐよ』 「犯人は地球に逃げるつもりか?」 『多分ね』
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