第一話 脚本

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  慌てて残りの食事をかき込む麻衣と明   日香。   明日香が立ち上がりながら、テーブル   のチラシを手に取る。 明日香「見て、生協の奴。また新入生にゴミスペックのPC売りつけようとしやがって」   マイペースにおにぎりを幸せそうに食   べるミナミ。   麻衣はミナミを見て、もどかしいよう   に時計を見る。 ミナミ「……この間、一階のトイレ初めて使ったんだけど」 麻衣「?」   おにぎりを小刻みに食べるミナミ。 もどかしい麻衣。 ミナミ「音姫の音が鶯の鳴き声のやつだった」 麻衣「……?」 ミナミ「これはリピート確定だな」   嬉しそうにおにぎりを噛みしめるミナ   ミ。    チャイムが鳴って、ほとんどの学生は   食堂を出てしまっている。 ◯オフィスビル・外観   30階建て以上の大きなオフィスビ   ル。   大勢の人々が出入りしている。その中   には人間もいれば、アンドロイドの姿   も。 ◯同・会議室   狭い会議室、田崎マモル(34)と   宮根清(39)が話している。   宮根は憔悴した表情で、顔の左側を怪   我している。   田崎は憔悴した宮根を見かねたように   席を立ち、コーヒーを入れる。 宮根「ピケにゃんっていうらしいんです」 田崎「?(突然の言葉に訳が分からない様子)」 宮根「知ってます? 詳しくないんですけど、ネコとイヌを足したようなキャラクターで」   じっとコーヒーを飲みながら、無言で   宮根を見る田崎。 宮根「ずっとピケにゃんのタオルケット使ってたんで、外出の時もずっと肌身離さずって感じで」   真っ直ぐに前を見据えながらも、感情   が消えたように淡々と話す宮根。 宮根「洗濯しても、ずっと待ってたんです。ベランダで、物干し竿の下で体育座りして」   段々と涙がこらえられない宮根。 宮根「……教えて下さい」 田崎「……(答えをためらうように顔をしかめる)」 宮根「息子は……取り戻せたんでしょうか?」
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