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沈黙する田崎。宮根もその沈黙で段々
と何かを悟る。
田崎「ホールを出た時点ではもう」
宮根「苦しみましたか?」
言い淀む田崎。
宮根「教えて下さい。わたしが引き起こしたことですから」
田崎「救命医の話では……内蔵の9割以上が無かったそうです」
ショックを受ける宮根。
宮根「おそらく、ホールを出る時に対価が足りずに」
宮根「家も売ったんです! 保険も全部解約して、今回の調査に応募したんです! 子供一人分の対価は用意していたはずなのに、なんで」
田崎「指輪です」
訳がわからないといった様子の宮根。
田崎「ホールの向こうから何かを持ち帰るには、同等以上の何かを向こうに置いてくる必要があります。確かに今回、乳児1人分の対価は用意されていたんですが」
迷いながらも口にする田崎。
田崎「お子様の手に指輪が握られていました」
宮根「指輪?」
田崎「希少価値の高いブルーダイヤの指輪です。おそらく、ホールを通る際に指輪の対価として」
宮根の目の前にブルーダイヤの指輪を
置く田崎。
田崎「この指輪の対価を支払ってしまったことで……内蔵の分の対価が消失してしまったことが原因だと思われます」
泣き崩れながら、指輪を握り潰す宮
根。
宮根「こんなもののために?」
じっと指輪を見つめる宮根。不気味なほど光輝く指輪。
指輪を握ったまま、ガンガンと手を机
に打ち付ける宮根。
田崎は見ていられず、思わず目をそら
してしまう。
会議室に宮根の嗚咽とガンガンという鈍い音が響く。
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