第一話 脚本

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◯同・駐車場(夕)   一台の車から降りてくる田崎。   何かを決意したように、病棟を見上げ   る。   手元の資料を確認する田崎。そこには   凪沙の写真がある。 田崎「……(決意したような面持ち)」   病院の中に向かっていく田崎。 ◯同・病室(夕)   麻衣が美容道具を整理している、逆さ   まの視界。   凪沙が車椅子に座りながら、首を後ろ   に目一杯倒して、逆さまに麻衣を見て   いる光景だと分かる。   真剣な顔でじっと麻衣を見る凪沙。   麻衣は凪沙の視線に気付き。 麻衣「なに?」 凪沙「……かっけーって思って」 麻衣「なんだよ、それ」   凪沙、起き上がり手元のタブレットを   操作する。タブレットには地図が表示   されている。 凪沙「動物園ってこんな近くだっけ」   簡易的な散髪ネットを付けて、凪沙の   髪を切り始める麻衣。 麻衣「だよね、家のこんな近くにライオンがいるなんてゾッとする」 凪沙「同感」   真剣な顔でハサミを入れる麻衣。鏡越   しに麻衣と凪沙の目が合う。   凪沙、照れ隠しのように目線を外し   て。 凪沙「あそこの動物園のゴリラ、バナナ食べた後で皮をたたむって知ってた?」 麻衣「そのデマ確認するために、少ない小遣い使って行ったんじゃん」 凪沙「そうだっけ?」 麻衣「……連れてってやるから、次の日曜」 凪沙「いいって、別に」 麻衣「バイトも休みだし」   段々とムキになったように、口調を   強める麻衣。 凪沙「いいから、ホント」   車椅子を自嘲気味に指さして。 凪沙「こんな、だから」 麻衣「行くから」   突然、強い口調になる麻衣。   凪沙もたじろいだように、黙る。 麻衣「行くからな」   黙って頷く凪沙。   沈黙が流れた時、ドアがノックされ   る。   不思議そうに目を見合わせる麻衣と凪   沙。   麻衣がドアを開けて出迎えて、怪訝な   顔を浮かべる。    名刺を受け取る麻衣。さらに不安な   顔。
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