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◯同・応接ルーム(夕)
テーブルに置かれた名刺。
名刺には『東京都ホール渡航管理事務
局 主任 田崎健一』とある。
麻衣が名刺を見ている。
何やら伺うように田崎を見る麻衣。
麻衣「ホールの方、ですか」
田崎「ホールのことについてはどれくらい?」
麻衣「……ニュースで見る程度ですけど」
田崎「ホールが開通したのは15年前、初めてのチームが調査から帰還したのがその5年後、今から10年前のことです。当時はアメリカ軍の所属でしたが、帰還兵の言葉はご存知ですか?」
麻衣「……ただひとつの例外無く、すべての捜し物が見つかる場所、ですよね」
頷く田崎。
田崎「その言葉がきっかけで、これまでリスクばかりが強調されていた、ホール探索に各国が本格的に取り組みました」
イメージカット、アンドロイドや医療
研究を行う人々。
田崎「医療、科学、軍事研究、人類はホールから持ち帰ったものによって、数百年分の技術革新をわずか数年で成し遂げたと言われてます」
田崎「でも、ゲートにはひとつのルールがあります」
田崎「持ち帰るものと、同等の価値を持つ何かを置いて帰ること」
田崎「この絶対的な制約によって、これまで人類は希少金属、歴史的価値の高い過去の遺産や芸術品、非公式には生きた人間をも対価として、ホール探索を続けてきました」
テーブルのファイルを指差す麻衣。
麻衣「それが、妹とどんな?」
少し、戸惑いながらも話す田崎。
田崎「失礼ですけど、妹さんのご病気は?」
麻衣「……リスト外の難病です」
田崎「余命は?」
言葉を返さない麻衣。
田崎「……すみません」
覚悟したように話しだす麻衣。
麻衣「妹はきっと……どうでもないことで死にます」
田崎「?」
麻衣「今はまだ元気ですけど、これから出来ることがドンドン減っていきます。喉に痰を詰まらせたり、風邪をこじらせたり、どうでもないことで、死ぬんだって本人も分かってるんです」
田崎「妹さんを救えるとしたら?」
麻衣「?」
田崎「妹さんは……」
◯同・病室(夕)
もうかなり日が傾いている。
ベッドに仰向けになって、タブレット
を操作している凪沙。
物憂げな表情を浮かべ、天井の写真を
見る。
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