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◯同・応接スペース(夕)
麻衣と田崎が話している。
田崎「信じられない話かも知れませんが」
麻衣「……止めて下さい」
田崎「……」
麻衣「あの子は……これまで色んなことを諦めてきたんです」
麻衣はぎゅっと握った拳から、指を一
本一本剥がすように。
麻衣「映画メイクになりたい、なれません。お嫁さんになりたい、だめです」
田崎「……」
麻衣「これ以上、あの子に何かを諦めさせたくないんです。希望を持たせるようなことは」
◯同・廊下(夕)
病室のドアの前に立つ麻衣。
ドアを開けようとするが、じっと考え
込むように立ち止まる。
廊下で一目を避けながら、何かを耐え
るように立ちすくむ。
◯同・病室
麻衣が入ってくる。
病室に入るなり、なにかを見て驚く麻衣。
ベッドにはレントゲン写真を胸に当てた凪沙。
呆れたような麻衣。
麻衣「なにしてんだよ」
凪沙「ヌードです、限界まで脱ぎました」
呆れて無視する麻衣。
凪沙「笑えよ、身体張ってんだから」
麻衣「下品なんだよ」
凪沙の身体、肩が痩せて骨ばっている。
首元から肩にかけて、黒い痣がある。
それに気付き、悲しそうな目を浮かべる麻衣。
麻衣「ちょっとトイレ」
背中を向けて出ていく麻衣。
◯同・トイレ(夕)
女子トイレの中、そそくさと手を洗って
出ていく女性。
個室の中、立ったまま壁によりかかり、
じっと涙を流す麻衣。
◯麻衣の家・入り口(夜)
分譲マンションのエントランス。
仕事終わりのサラリーマンや家族連れ
が中に入っていく。
◯同・外観(夜)
ところどころ明かりが点いている
マンションの外観。
◯同・廊下(夜)
暗い廊下。誰もおらず、静か。
玄関のドアが開き、麻衣が入ってくる。
暗い部屋の中を見て、寂しそうな顔を
浮かべる麻衣。
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