第一話 脚本

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◯同・応接スペース(夕)   麻衣と田崎が話している。 田崎「信じられない話かも知れませんが」 麻衣「……止めて下さい」 田崎「……」 麻衣「あの子は……これまで色んなことを諦めてきたんです」   麻衣はぎゅっと握った拳から、指を一   本一本剥がすように。 麻衣「映画メイクになりたい、なれません。お嫁さんになりたい、だめです」 田崎「……」 麻衣「これ以上、あの子に何かを諦めさせたくないんです。希望を持たせるようなことは」 ◯同・廊下(夕)   病室のドアの前に立つ麻衣。   ドアを開けようとするが、じっと考え   込むように立ち止まる。   廊下で一目を避けながら、何かを耐え   るように立ちすくむ。 ◯同・病室   麻衣が入ってくる。   病室に入るなり、なにかを見て驚く麻衣。   ベッドにはレントゲン写真を胸に当てた凪沙。   呆れたような麻衣。 麻衣「なにしてんだよ」 凪沙「ヌードです、限界まで脱ぎました」   呆れて無視する麻衣。 凪沙「笑えよ、身体張ってんだから」 麻衣「下品なんだよ」   凪沙の身体、肩が痩せて骨ばっている。   首元から肩にかけて、黒い痣がある。   それに気付き、悲しそうな目を浮かべる麻衣。 麻衣「ちょっとトイレ」  背中を向けて出ていく麻衣。 ◯同・トイレ(夕)   女子トイレの中、そそくさと手を洗って   出ていく女性。   個室の中、立ったまま壁によりかかり、   じっと涙を流す麻衣。 ◯麻衣の家・入り口(夜)   分譲マンションのエントランス。   仕事終わりのサラリーマンや家族連れ   が中に入っていく。 ◯同・外観(夜)   ところどころ明かりが点いている   マンションの外観。 ◯同・廊下(夜)   暗い廊下。誰もおらず、静か。   玄関のドアが開き、麻衣が入ってくる。   暗い部屋の中を見て、寂しそうな顔を   浮かべる麻衣。
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