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一面の蒼、視界いっぱいに空と海が広がる。海面に騎体が映る自分が乗っているこの世界の戦場を支配する兵器、竜騎だ。
この世界にはかつて竜たちがこの星を闊歩していた、らしい。竜たちはずっと昔、人類が生まれるより前に滅び、各地に朽ちぬ躯のみを残している。それらを素材に作られた兵器こそ竜騎、魔力を使った強大な推進力と運動性、そして騎乗者の思考に直結することで他の航空兵器では成しえない反応速度と動きを実現する。空における最強の力。
《ブリック2、そろそろ会敵予想地点だ、どうせまた只の嫌がらせだろうが、万一の場合もある。鳥気分で海面すれすれ飛んでないで高度を上げろ》
僚騎から通信が入る、気づけば接触予定地点まであと数分といった所だった。
機体を引き起こし、高度を上げ、僚騎と編隊を組む。
《まったく・・・》
〈すまないブリック1、こいつには後でしっかり言っておく〉
後部座席のフライトオフィサが口を開く。
《そう言ってこれが何度目だ?人の趣味にあまり口出ししたくはないが、そっちの不手際で貧乏くじは引きたくないぞ?》
《そこまでだ、私語は謹め。まもなく不明機と接触する。いつも通り不明機を直接確認し警告、お帰りいただく。いいな?》
基地の管制官が指令を出す。だいぶ不機嫌そうだ、毎回のようにやってれば当たり前か。
《ブリック1了解》
「ブリック2了解」
目標地点に着き周囲を確認する。地上の探査結界によってある程度の位置はわかるが最終的にはこちらで確認しなければならない。
機体の魔力探査機を使うのが手っ取り早くはあるが、その場合先にこちらの居場所がばれてしまう。面倒だがいつものことだ。
〈こちらブリック2、見つけた高度3200 距離150 方位19 三機だ〉
《ブリック2、こちらも確認したバグ二騎、ガランが一騎。バグはともかく、こんなところにガランが?》
ほどなくして、相方が不明騎を見つける。機体はいつもの隣国のものだが一騎見慣れない機体がある。
《ガランだと?・・・共和国の竜騎だぞ、確かか》
《あぁ間違いない。ヴォルケン、どうする?》
《・・・任務に変更はない、飛行中の不明機三機に対し警告、現空域からの退去を命じろ。応じない場合威嚇射撃、それでも無視する場合もしくは敵対行動をとった場合は戦闘に入れ。ただし、絶対にガランとは単騎で戦うな、いいな?》
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