スペア未満

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 熱弁しだした男を眺めながら、わたしは頷いて話を促す。面白そうな話だった。ダッチワイフといえば、例え話でよく引用される。「わたしってダッチワイフにされてる?」「あいつはダッチワイフみたいなもん。次の彼女ができるまでの繋ぎ」等々。主に、まともなデートをしないでセックスばかりしているカップルの女性に宛がう名詞だ。あ、最近はセフレの方が多いか。とにかく私は、本物のダッチワイフを見たことがなかった。 「うちが作っているのはシリコンのリアルドール。以前はソフトビニールやウレタンもやってたんだけどね。最近のニーズはやっぱり全身シリコン製なんで。あ、あなたに頼みたいのは、顔のスキャンと、石膏でのかたどり、なんですけど、どうですか」  わたしは即答できなかった。自分と同じ顔の性欲処理人形。想像してみたけど、あまり気分の良いものではない。 「あ、そんな難しく考えなくて良いよ。あなたの顔そのまんまってわけじゃないから。不気味の谷っていう現象を避けるために、ちゃんと人形らしいエッセンスを加えて作るから」  男が言うには、わたしの顔はロリと生意気が混在していて、いままでにない萌えのタイプらしい。     
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