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「だから、それをテストで書くのか? 俺は良いが、恥をかくのはお前だぞ。この間は、分からないって言うから、分かりやすく俺とお前で例えてやっただけだろう」
鍵と鍵穴の関係。
分かりやすいように、春允と夏人の関係になぞらえてやったのだが、それが良くなかった。
さらに、肉体派な夏人にも分かる様に、ベッドの中で実践して教えてやったのもいけなかったのだろう。すっかりそちらしか覚えていない。
基質=鍵=春允。酵素=鍵穴=夏人。生成物=××。
殆どおちょくったような例え話を夏人が妙に納得したので、一抹の不安を覚えたのだが、案の定妙な覚え方をしていた。
「俺の説明を丸暗記しろ。お前、一時的な暗記だけなら得意だろう。追試が終わったら忘れていい」
「勉強の意味ないじゃん」
文句を言いつつも、それが一番手っ取り早いと理解した夏人は、ノートに書かれた春允の説明を一生懸命に暗記する。その真剣な耳元で、春允はささやいた。
「いいか。ナツの鍵穴は、俺の鍵でしか開けられないんだからな。他の鍵を突っ込まれても、反応するんじゃないぞ」
「ああもう! 変な言い方するなよ! またテストで悶々として答えられなくなるじゃないか!」
夏人は顔を赤くして頭をかきむしった。
「ああ、テストで答えられなかったのは悶々としていたからなのか」
春允は、楽しそうに笑った。
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