第1話

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○回想・同   奏汰が水色のギターの弦を構えている。 ○戻って、同 紡「うわ、この弦錆びてる」 遥花「……油売ってないで、パスワード探しましょう」   スマホの通知音が部屋に響く。   遥花、ポケットからスマホを取り出す。   画面にはLIVIEのメッセージ通知。   送り主は奏汰。   トーク画面を開く遥花。   『新曲の予告動画出した!』というメッセージ。 遥花「は?」 紡「どうしたの?」 遥花「新曲の予告動画出したって……」 紡「!」   紡、自分のスマホを取り出す。   顔を顰める紡。 遥花「(M)新曲って……いや、まさか……」 紡「確かに出てるね」   紡、スマホの画面を遥花にも見えるように差し出す。   Tvvitterのタイムライン画面。   アカウント名『Far-away@frwyaaa』の動画付き投稿。   コメントには『制作中の新曲をチラ見せ!』の文字。   紡、動画の再生ボタンを押す。   動画は『Far-away』という白文字に黒バックだけの静止画の映像。   15秒ほどの曲が乗っている。 遥花「あ……」 紡「知ってるの?」 遥花「事故の少し前に送られてきたデモに似てるような……」   遥花、スマホをいじる。 遥花「これ……」   スマホから先ほどの映像と同じメロディーが流れる。 紡「確かに似てる。というか、同じメロディーかも」 遥花「でも何で……」   俯く遥花を見つめる紡。   息を吐き、袖を捲り上げる。 紡「……お腹空いてきたなぁ」 遥花「急に何言って……」 紡「一旦休憩しない?」   薄く笑う紡に遥花は溜息を出す。 遥花「そうですね……」 ○同・リビング(夜)   テーブルの上には麻婆豆腐に卵スープと中華風な食事が並ぶ。   エプロンをつけた紡の前には缶ビール。 紡「はい、召し上がれー」 遥花「いただきます」   そう言いながら手を合わせ、箸を取る。   そんな様子を見つめる紡。   テーブルの周りには四つの椅子。   遥花、麻婆豆腐を一口食べる。 遥花「紡さん、料理できたんですね」 紡「クックダーさえあれば余裕ってね」   遥花、キッチンの方へと視線を向ける。 ○同・キッチン   コンロの周りに散らばるレトルト食品『クックダー』の開封済みの袋たち。
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