第1話

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○和泉家・アトリエ(夜) 遥花「っ!」   目を開く遥花。   スマホからは曲(Far-away新曲のデモ音源)が流れている。   膝に頭を乗せるようにして眠っていた頭をゆっくりと持ち上げる。   肩から滑り落ちる長い金髪。   室内は白い壁に大きな窓。   窓の外にはもうほとんど沈んでしまった夕陽が見える。   薄暗い部屋の中には、あちこちに置かれた大小さまざまなキャンパス。   絵具で汚れた棚には油絵の画材が並ぶ。   部屋の真ん中には布を被った一際大きなキャンバス。   その正面に膝を抱えて座り、キャンバスを見つめる遥花。   遥花の足元には閉じたままのスケッチブック、その上に筆箱とスマホ。   筆箱には赤いヘアピンを留めている。   スマホの通知ランプが光る。   遥花、スマホを手に取り、曲を止める。   画面には『LIVIE(ライヴィー)』   (チャットや通話のできるコミュニケーションツールアプリ)のチャット画面。   送信者は奏汰。   『体調でも悪いのか……?』 遥花「(溜息)」   画面をスクロールすると、一方的に送られている奏汰からのメッセージ。   遥花、返信せずにスマホを置く。 遥花「奏汰……」   膝に頭を埋める遥花。 ○溜池高校・外観(朝)   校門には『溜池高校』の銘板。   登校してくる生徒たち。 ○同・廊下   遥花、眠そうな目で廊下を歩いてくる。   遥花と反対側から女子生徒CとDがスマホを手に歩いてくる。 女子生徒C「最近『Far-away(ファラウェイ)』の更新全然ないよね」 女子生徒D「いつもだったら新曲出してる頃なのに」   女子生徒Cの持つスマホには『Tvvitter(ツヴィッター)』   (文字数制限のあるメッセージや画像、動画、URLを投稿できるアプリ)の   Far-awayのホーム画面。   二人をじっと見つめる遥花。 女子生徒C・D「ひっ……」   女子生徒C、D怯えながら端へと避ける。   視線を逸らした遥花、ずんずんと歩く。 女子生徒C「(小声で)何、不良?」 女子生徒D「(小声で)うちの高校そんなのいるんだ。怖……」 遥花「……」   遥花、『2―A』の教室札がかかった教室へと入っていく。
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