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紡、スマホを取り出し、画面を見て苦い顔をする。
紡「本当、世の中にはしょうもない悪戯考えるやつがいるよ」
紡、スマホを遥花に見せる。
『今日ジャプンの発売日じゃん! ちゃんと買ってきた?』
というメッセージ。
遥花「……ネットじゃ、幽霊の仕業だなんて騒がれてますよ」
紡「幽霊?」
遥花「あまりにも本人っぽいから、って。
うちのクラスでも面白がってるやつらもいるし……」
紡「はるちゃんは?」
遥花「返信して何になるんですか」
紡「……そうだね」
スマホをポケットにしまう紡。
仏壇の奏汰の写真を見つめる。
紡「もし幽霊だったとしても、四十九日も終わったのに、今さら遅いって話……」
遥花「……」
笑顔を浮かべ、遥花に向き直る紡。
紡「で、そう。手伝ってほしいことがあって」
○同・奏汰の部屋
本棚から本を抜いていく遥花。
本棚には教科書や音楽関連の本『ギター入門』『作曲の心得』などが並ぶ。
紡「やっぱりはるちゃんも知らないかぁ、パスワード」
遥花「そもそも人に教えるものじゃないですし」
遥花、抜いた本をペラペラと捲る。
遥花「でも、ありますかね? メモなんて」
紡「あいつ忘れやすいからさ、どこかに残してないかなぁ、って希望」
デスクの引き出しを漁る紡。
遥花、デスクに乗ったパソコンを見る。
遥花「SNSのパスワードって……あ、スマホのメモ帳とか」
紡「俺も思ったけど、スマホは事故の時に壊れちゃったみたいでさ」
遥花、手に持っていた本を本棚にしまい、別の本を抜き取る。
埃が舞い、くしゃみが出る。
紡「あぁ、ごめん。掃除まで手が回らなくて」
遥花「いや……」
視線を下げると埃を被った水色のギター。
遥花「……」
紡、ギターを見下ろす遥花に気付く。
紡「それ、高校入学祝いであげたやつ」
遥花「随分奮発してくれた、って奏汰言ってましたよ」
紡「冬のボーナスが余ってたの。まさか一年そこそこで埃被ることになるとはね」
紡、ギターを手に取る。
デスク前の椅子に座ってギターを構える紡を見つめる遥花。
遥花「弾けるんですか?」
紡「一応、元軽音部だよ?」
言いながら弦を静かに弾く。
紡「あー…チューニングしないとか」
呟きながらギターに触れる。
その様子を眺める遥花。
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