第1章

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 俺と平川は階段を駆け下りたが途中でバシャッ、バシャッ。冷たい! 水? 水が溜まっていた。仕方なく引き返す。 「いかん、キョウジ。これじゃ進めない」 「待て、水が溜まってるって事はここは1階かもしれん。窓から逃げられるぞ」 「窓には鉄格子が着いてる、簡単には……。キョウジ、上の階に行ってみよう」  俺と平川は階段を上がる。 「うっ……頭が痛い!」 「大丈夫か?」 「記憶が断片的なんだ。平川、先に行ってくれ」 「分かった」  俺は階段の踊り場で踞る。頭がとにかく痛い。自然と顔の痛みはなくなった。 「ったく、なんなんだよ」 「おーい! キョウジ! 人が倒れてるぞ!」 「大声を出すな。頭がガンガン痛い」  俺は上の階に上がると白いスーツを着た男が仰向けで倒れていて、顔には白い布が被せられていた。 「じゃらじゃらと金のネックレスに腕時計、チンピラみたいな奴だな」  平川は“それ”に近付き、布を取る。平川は男の顔を見て何か考えてるようだ。 「どうした、知り合いか?」 「嵐田だ」 「誰?」 「中高の同窓生だよ。死んでるのかな?」 「布が動いてなかった。つまり、呼吸をしてない」 「やっぱり死んでるのか」 「涙は流さないんだな」 「チンピラで前科がある奴だ。死んでも誰も困らないだろう。それにこの状況だ、例え大切な人だったとしても泣いてる暇はない」  平川はそれのポケットを探る。 「何かあるか?」  平川がニタッと笑む。 「携帯電話だ。ガラケーだが、さて、どうかな?」 「使えるといいが」  平川は携帯電話を開き、操作する。 「ダメだ、シムカードが入ってない」 「小さい物だ、くまなく探そう」  俺達は嵐田を丸裸にしてシムカードを探す。ここの階にはゴミは散乱してないがダメだ、ない。どこを探しても。嵐田というそれは全身アザだらけだった。撲殺か。 「平川、3階に上がろう。ここには死体以外ない」  俺達は3階に上がる。すると、いきなり「誰かー! 誰かー!」と叫ぶ男の声が聞こえた。
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