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じいちゃんはオレから見てちょっと不思議な人だと思う。
「いらっしゃいワタル」
いつものようにインターホンを押すと、すぐに目の前の引き戸が開いてじいちゃんが顔をのぞかせた。
創(はじめ)じいちゃんだ。
「いきなりで悪いのですが、ちょっと用ができましてね…。少し出かけてくるからお前に留守番を頼みたいのですが」
「うん、いいよ」
「じゃあお願いしますよ。すぐ戻ってきますから」
そう言って出かけていくじいちゃんを見送りつつ、オレはじいちゃんの家に上がりこんだ。
玄関の戸を閉め鍵をかけると、静けさが辺りを包んだ。
慣れた様子で居間へ入ると、ランドセルを適当に置き、店で買ってきた菓子パンをテーブルに置く。
中身はあんぱんとメロンパンだ。
すると部屋の隅で音がした。
パキ、ミシ…、という板が軋むような音である。
「…やっぱり来るか」
オレのじいちゃんは不思議な人だけど、そのじいちゃんが住むこの家もまた、おかしなものがいる。
板が軋むようなその奇妙な音はだんだん大きくなり、それとあわせて家がざわつく気配を感じた。
ざわざわ…、
ザざざ――…
この感覚も、ここに来るにつれて次第に慣れてきたな。
大勢の人間が一斉にささやいているかのような気配が近づいてくると、居間の隅や天井から小さくて黒い影たちがもぞもぞと現れた。
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