死ねって言われる

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死ねって言われる

人は死ぬのを嫌がる。怖がり、避ける。 それは不可能なのに、分かっているのに逃げる。 私もわかっているのに逃げていた。余命も残り僅かなのに、まだ何も考えていなかった。死んでからのこととか、遺言とか。持ち物の整理もしなければならないし。だけどその行為を終えたらわたしはきっと桜のようにちってしまうと思った。全て心残りが無くなってしまったら、生きてることに意味を見いだせず、飛び降り自殺でもするとおもう。 もう、私の体に繋がれてるくだを外すことは出来ない、と先日医者から言われた。くだを外せば数時間で死ぬと。 分かっていた。分かってたからこそ怖くなった。もう自撮りをしても、加工をしても完全にこのくだを消すことは出来なくて。違和感を抱えたまま死ぬのだ。 くだ外したらどうですか?と、もう死んでしまった同室のメンバーに言われたことがある。彼も重い病気を抱えて生きていた。生きがいは唯一見られるテレビで自分の好きなアイドルを愛でることだった彼。彼は私みたいにくだを付けていたわけじゃないけど、毎日点滴を2袋やっていた。本人は、点滴の袋を取り替える時!ずっと空になった点滴の袋を見つめていた。 「えっ。それって私に死ねって言ってる?」 わたしは笑いながら言った。別によかった。彼が死ぬまでの3ヶ月間、一緒にいただけの仲だ。だから他人と個人的には思ってた。他人から死ねって言われるのって、多分ネットで言われるのとなんら代わりがないのだと思う。だからほぼ何も感じなかった。 「はい。言ってます。」 真顔で彼は答えた。 「なんで?」 「あなた苦しいでしょ。」 一旦間を置いて私は言った。 「なわけないでしょ。これは息をしやすくするものなんだから。分かってないなぁ。」 「違う。」 ちがう。そうはっきり言われた。 「君の心が苦しいって言ってる。」 正直なところ図星だ。自分ではあまり分からないけど、それでも自分の心が無理をしていることを私は知っている。体も心もボロボロにしてしまう人間なのだ。
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