カカオ80パーセントチョコレート

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カカオ80パーセントチョコレート

 好きな人がいるって、ましてや両思いって、彼氏彼女の関係にいるって、甘くてキラキラして暖かい光に包まれてるような、幸せな日常だと思っていた。 「あれ、いいの?」  放課後、3階の教室から見える中庭のベンチには、茶髪に制服を着崩した男子生徒が座っている上に、至近距離でくるんくるんのロングヘアの巻き髪にこれまた超ミニスカートの女子生徒が乗っかり、今にもコトが始まってしまうのではないかというシュチュエーション。この時間帯なのでほぼ人はいないが、通る人たちはその光景を見てぎょっとして、慌ててそそくさと小走りになっていた。  教室から、この一部始終を友人の優美が気づき、私に声をかけた。女子生徒のことは知らない。男子生徒のほうは、よく知っている顔。虫唾が走るとはこのことだ。 「・・・いいよ、もう」 「それも何回目?」  彼女が「も」と言った意味を、私はすぐに理解した。浮気性の彼氏と、毎回毎回泣かされて、それでも最後にはそれを許してしまう彼女。それを慰めてくれる友人。優美の言うとおり、これは一体何回目の会話だろう。 「今日でほんとに終わりにする」  優美は何も言わず困ったような顔を私に向ける。信じてないって顔。そりゃそうだ、今まで幾度となく同じような会話をしてきて、結果私たちはまだ彼氏彼女の関係なのだから。  私から顔をそらして、優美はまた中庭に目を向ける。 「あっちはあっちで、確信犯だしね」
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