カカオ80パーセントチョコレート

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   「・・・え、や、いま・・」  「別れてほしいっていった」  初めて、翔ちゃんの目を見て言えた。翔ちゃんはさっきよりもさらに目を見開いて、私の頬に添えていた手をゆっくりと下ろした。今まで何度も何度も迷って飲み込んだ言葉。言ってしまってよかったのかは正直わからない。  「・・・嘘、だろ?だって亜理」  「翔ちゃんと付き合えて良かった」  「・・・・」  「大事にしてくれて、今までありがとう」  翔ちゃんが何か言いかけた言葉を遮って、最後はせめてと笑顔でバイバイ、と告げる。さっきまで涙は止まらなかったのに、今は不思議と出てこない。こういう局面でこそ出てきてくれてもいいものなのに。  翔ちゃんはそれ以上何も言わなかった。私はその場で靴を履き変え、カバンを肩に背負い直して校舎を出た。翔ちゃんの方を、振り向くことはしなかった。 
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