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「・・・え、や、いま・・」
「別れてほしいっていった」
初めて、翔ちゃんの目を見て言えた。翔ちゃんはさっきよりもさらに目を見開いて、私の頬に添えていた手をゆっくりと下ろした。今まで何度も何度も迷って飲み込んだ言葉。言ってしまってよかったのかは正直わからない。
「・・・嘘、だろ?だって亜理」
「翔ちゃんと付き合えて良かった」
「・・・・」
「大事にしてくれて、今までありがとう」
翔ちゃんが何か言いかけた言葉を遮って、最後はせめてと笑顔でバイバイ、と告げる。さっきまで涙は止まらなかったのに、今は不思議と出てこない。こういう局面でこそ出てきてくれてもいいものなのに。
翔ちゃんはそれ以上何も言わなかった。私はその場で靴を履き変え、カバンを肩に背負い直して校舎を出た。翔ちゃんの方を、振り向くことはしなかった。
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