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今何時なんだろう。学校を出たのが遅かったせいか、丸い大きな夕日が半分沈みかけていた。携帯を確認すればわかることだけれど、それさえも今はいいやと思ってしまう。学校から家までの距離が徒歩15分の中、一向に見慣れた景色が見えてこないがここはどこ?ってなるほど抜けてはいないから、一応自分の歩いている場所がどこかは理解していた。
足が着いた先は、家の方向ではあるものの、少し離れたコンビニだった。ここにしか売っていない限定のアイスを買いに、翔ちゃんとも来たことがあった。店の中には入らず、外の入口脇のガラスに身を凭せた。夕暮れから空の景色はガラリと変わって、遠くにまん丸より少し欠けた月が見える。
地面に落ちている小石を足で遊びながら、はあ、と自然にため息が出る。今日はため息ついてばっかりだな。幸せ逃げていっちゃうな。もう逃げていったのか。いや、私から逃げたのか。
「あれ、この時間って初めてだね」
「!・・あ」
顔を上げると、ボサボサのゆるくパーマのかかった黒髪に無精髭、寝起きですと言わんばかりの上下スウェットを着た長身の男が、少し距離を置いて立っていた。買い物をするわけではないのにここへきた理由は、この人だった。もしかしたら会えるかもと思ってきてみたけれど、本当に会えるとは思っていなかった。
「こんばんは」
「こ、こんばんは」
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