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金平糖
メルヘン思考な彼女の話は、いつも唐突だった。
今日の彼女はというと、金平糖を小瓶から出して眺めている。
「可愛いよね、金平糖って。お星さまみたいで」
「うん。君に合ってると思うよ」
お世辞でもなんでもなく、本心からの言葉だった。でも、彼女の目は金平糖を見たままだ。
いつだって彼女は夢の中にでも居るようだったが、今日は特にそれが激しい。この数時間で目が合ったのは数えるほどだ。
「この金平糖ね、流れ星って名前で売ってたの。願い事が叶うかもしれないね」
「ふぅん」
「食べてみる? 叶わなくても、別にマイナスになるわけじゃないんだし」
彼女はそう言って、三粒程の金平糖を手に乗せて見せた。ピンク、緑、黄色とカラフルなそれが並んでいる。
幼いころ以来かもしれない。そもそも、甘いものはそんなに得意ではなかった。
「一つもらうよ」
それでも、僕はそれを一つ選んで、口へ運んだ。
軽やかな音を立てて砕けたそれは、甘い。けれど、嫌な味ではなかった。
願い事が叶うなんて、別に本気で信じてたわけではない。
彼女と知り合う前の僕なら、きっと呆れてしまっていただろう。
それでも、彼女の金平糖は、確かに僕の願いを叶えてくれる気がした。
「君にもう少し、僕を見てほしい」
*END*
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