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「だったら、墓地の話題はおかしくないわね。わたしの歌は、その墓地と関係があるから」
「どういう意味?」
墓地と歌にいったいどんな因果関係があるというのか。僕にはさっぱりわからない。
「わたし、霊感が強いの。そのせいか普通の人には見えないものが嫌でも見えてしまうのよ。ちなみに、今もこの校庭を埋め尽くしているわ」
淡々と語る彼女の言わんとすることを察し、僕は無言で校庭を眺めた。霧雨の奥に校舎があるだけだ。校庭には、だれ一人として見当たらない。
彼女は話をつづける。
「あなたにはわかるかしら? 登校するたびに、霊が視界を覆う人の気持ちが」
僕は黙ってかぶりを振った。
「なにをしていても視界の隅に映る彼らをどうにかすべく、わたしは考えたの。それで得た方法が歌だったわけ。鎮魂歌というね」
言い終えると、彼女はすうーっと息を吸い、おもむろに歌いだした。ヒップホップでも演歌でもない旋律が僕の耳をくすぐる。
癒される感覚に酔いしれ、僕はしばらく聞き惚れていた。
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