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「もう何回目かわからんけど、波野の失恋を癒す……ことにかこつけた飲み会始めまーす。ほなカンパーイ!」
「ギャハハ、そのセリフも何回目だっつーの。カンパーイ!」
「お前らね。そういうのをネタにするのは良くないっていつも言ってるだろ」
「……なんとでも言ってくれ」
俺はぼそっと呟いてから、ジョッキに口をつけた。
まだまだ朝晩は肌寒い日が続くけれど、それでもキンキンに冷えたビールはなぜこうも旨いのだろうか。
こいつらと出会った頃は、ただ苦いだけで最初の1杯を飲み干すのがやっとだったなぁ、なんてことを思い出す。
あれからもう5年か。
大学3年のときからのゼミの仲間たち。
卒業してからもこうして2、3ヵ月に1度は集まって飲むぐらいに気の合う奴らだ。
「そいや遠野も来るて?」
「マジ?」
「あぁ、この間ばったり仕事で会ってさ。飲み会のこと話したら行きたいって言うから誘った。まずかったか?」
「そんなわけあるかいな!」
「グッジョブ」
ゼミの名物だったお調子者コンビの上田と加藤が揃って親指を立てている。
そうか、こいつら遠野さんのことが好きだったんだよなぁ。
電気工学科という男所帯において、女子というだけでも貴重な存在なのに、遠野さんはとにかく美人だった。
そりゃもう、そこだけ空気が違って見えるぐらいに。
ただまぁ、残念なぐらいにロボットヲタクだったんだけど。
いや、そのギャップがさらにモテる要因だったのかもしれない。
科の男のほとんどが、彼女のことを密かに想っていたとかで。
唯一、当たって砕け散った強者が上田だ、なんて噂もあったなぁ。
真相はわからないけれど、恋愛方面に明るい人は少なかった気がするうちの科で、面と向かって遠野さんに告白した奴はそういないと思う。
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