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「波野? おーい、どうした?」
「え?」
目の前で冴木の掌が揺れていた。
いつの間にか自分の世界に入り込んでいたようだ。
「悪い、上田が学食でいきなり遠野さんに告って振られてるとこ思い出してた」
「なんやて!? 古傷えぐらんとってやー」
そう言いながらも上田は笑顔のままだ。
振られた直後ですらも笑っていたように思う。
さすがにそれは強がりだったのかもしれないけれど、今は純粋に再会を楽しみにしているように見える。
冴木もそのへんをちゃんとわかっていたから声をかけたのだろう。
加藤だって前回の飲み会で彼女ができたことを報告してくれた。
なんか。
よくわからないけれど。
俺だけが取り残されている気分になる。
学生の頃の恋愛って、そんなに簡単に忘れられるものなんだろうか?
振られたからそこで終わり、だなんてあっさりと割りきれてしまうのが普通なんだろうか?
俺が女々しいだけなんだろうか……?
また、思考が過去にトリップしかけたときだった。
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