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それからは、主に仕事について近況を報告し合った。
俺たち男3人はまだしも、遠野さんとは卒業してちょっと経った頃にあった飲み会以来だから、もう2年近く会っていなかった。
皆、それぞれ別の分野へと進んだ。
俺は家電メーカーの品質管理部、上田は玩具メーカーの制作部、加藤は自動車メーカーの生産部、冴木は医療機器メーカーの開発部、そして遠野はロボット製作会社の設計部。
まだまだ就職難といわれるこのご時世で、皆、そこそこ大きな会社で働いている。
まぁ不満がないわけでもないけれど。
それでも好きなことを仕事にできたわけだから俺たちはラッキーなんだと思う。
特に遠野さんは念願叶ってロボットを作っているのだ。
もう、執念といってもいいかもしれない。
いくつもの会社を受けて、その度に落とされて。
ときには「女だから」なんて理由で不採用にされたこともあったっけ。
それでも諦めなかった。
彼女が内定をもらったときは、ゼミ仲間全員で喜んだんだよな。
「ほんでさ、プライベートはどうなんよ? 今、彼氏おるん?」
唐突に上田が切り込んだ。
「ギャハハ、直球かよ」
「えぇやん、お前も気になっとったんやろ」
皆、ビールから焼酎やらハイボールやらに変えて3杯目に突入していた。
ほどよく酔いが回り始めていて、テンションが上がってきている。
「私の彼氏は今も昔もガン○ムなんですー」
「うわ、まだそれ言ってるんだ。いい加減痛いぞ」
「仕方ないじゃない、出会いなんて全くないんだもん。周り、おじさんばっかりよ。みんなこそどうなのよ?」
遠野さんのその言葉に、視線が俺に集中した。
「……はぁ」
思わずため息がこぼれる。
「あれ、ごめん、まずいこと言った?」
「いや、大丈夫」
そうは言うものの、上手く笑えていないことは自分でもわかっている。
「すまん、すまん。つい」
バツが悪そうに上田は頭を掻いた。
そうか、ずっと気を遣われていたのかもしれない。
もしかしたら、毎回乾杯の音頭のときにあのセリフを言うのは、俺の様子を伺っていたのかもしれない。
「えっ、まさか別れたの!?」
「うわ、直球かよ……」
加藤、聞こえているぞ。
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