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――4年も付き合っていた彼女がいた。 同じ大学の別の学部で1つ年下。 彼女が落とした学生証を届けたことがきっかけで、なんて少女マンガにでも出てきそうな話だよな。 俺の一目惚れだった。 まさか自分の人生でそんなことが起こるなんて考えてもみなかったのに、彼女のはにかむような柔らかい笑顔に一瞬で心を奪われてしまったのだ。 恋愛に奥手だった俺に、アドバイスをしてくれたり、なんやかんやと協力してくれたのが上田たちだった。 面白がっていただけのように思わなくもないけれど。 とにかくそんな仲間の助けがあって、奇跡的に付き合うようになったのだ。 「結婚しちゃうんだろうなって思ってたのに」 俺もそう思ってたよ。 なんとも言えない空気がその場に流れる。 もう終わったことだよ、って笑い飛ばすのが大人の対応だということぐらいわかっているけれど。 目頭が熱くなってきているのは酒のせいでも、気のせいでもない。 さすがにここで泣くのは格好悪いからしないけれど。 「いつ別れたの? なんで? って聞くのは無神経かなぁ?」 遠野さんは上目遣いで俺を見つめる。 そんなことをされたら、普通はドキドキしてしまうものだろう。 でも俺の脳裏に別れた彼女の笑顔が浮かぶ。 「……丁度1年前にね。他に好きな人ができたんだって」 口にすると、そう告げられたときの彼女の声や表情が蘇ってきて、いよいよ涙腺がやばくなってくる。 結婚するつもりだった。 まだ彼女も俺も社会人になって1年目と2年目で、さすがにすぐにというわけではなかったけれど、そろそろ同棲してはどうかと提案しようと考えていた矢先のことだった。 ――ごめんなさい、他に好きなひとができました。別れてください。 震える声で彼女はそう言ったのだ。
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