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 「ユンさん」と呼ばれるものの、これは私の名前では無い。しかし、呼び名が無いと不便と感じているのだろう。彼らは私に勝手に名前を付ける。「リンさん」とか「ヨウさん」とか呼ばれていたこともあった気がする。どういう基準で付けているのかはよくわからないが、まぁ嫌いではない。  自分の本当の名前はなんだったのだろう。ものすごく暇な時に、それこそ彼らの声がまだ聞き取れない時期に考えてみたりもするけれど、全く思い出せない。  過去の記憶は、時間が経つにつれてどんどん薄れていっているようだ。夢の中のようなぼんやりとした輪郭が、ごくごくたまに脳裏に浮かぶ程度。  まぁ別に、名前を忘れてしまっても今の私には全く支障はない。必要な時に彼らが適当に名付けてくれれば、それで構わない。
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