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「俺の傍に居ろ、そこが一番安全だ」
え、え、えーッ!?
「カッコつけやがって!」
今度は木刀を遠くまで蹴り飛ばす。
てゆーか、今の台詞!
次々とゾンビみたいに立ち上がっては殴りかかってくる不良を蹴散らしていく鷺ノ宮君。
主人公の台詞と同じ‥‥!
私の頭は爆発してしまったように、何も考えられなくなって、ぼーっと見てるだけ。
3人が起き上がらくなった所で、
「コラーッ! 何をやっとるかーッ!」
竹刀を振りかざした生徒指導の教師が走ってくる。
「おせーよ、センコー」
残り二人も、立ち上がれなくなったみたい。
「巻き添えにして悪かったな。センコーは俺に任せて帰れ」
「え?」
「いいから早く行け」
私の背中を押す鷺ノ宮君。
言われるまま、校門へと走る。
校門を出た所で壁に隠れながら、覗き見る。
鷺ノ宮君に何か注意しつつ、スマホで電話をかける教師。
他の生徒も遠巻きに見てる。
やがて、パトカーと救急車のサイレンが聞こえてきて校門前に止まると、倒れた五人を運び出す。
警察官に鷺ノ宮君の頭を押さえつけて礼をする教師。
警察官が敬礼してから、パトカーに戻る。
鷺ノ宮君は、教師に連行されて校舎に戻っていく。
心の中で「ゴメンナサイ! ゴメンナサイ!」と謝りつつ、家まで走って‥‥途中で息切れして、何とか帰宅。
小説の続きを読んでると主人公と鷺ノ宮君が重なって見える。
ヒロインへの感情移入が激しくなる。
*
読み終わった。
そして、私は将来の夢を決めた。
*
なかなか寝付けなかったけど、目覚まし時計で、いつもより早く起きた。
ヒロインに倣って、お弁当を二つ作った。
*
眠い‥‥けど、今日は決戦の日。
頑張れ、私!
教室、窓際の最奥の席で、鷺ノ宮君は、脚を机に投げ出して、椅子を傾けてる。
「お、おは‥‥おはよう、鷺ノ宮君!」
言えた!
「あ? おはよう? 誰だっけ?」
「き、昨日助けて、もらった‥‥」
「あー、そっか、昨日の。同じクラスだったのか」
「あの、これ、昨日のお礼です!」
お弁当と小説を差し出す。
「礼なんか別に気にしなくていいぜ?」
‥‥私は差し出したまま固まってる。
教室が静まり返る。
「‥‥わかった。有り難く貰うな」
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