第一話 友との再会、オペラの悲劇

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リイナの言葉に京市は目を丸くした。 鈴助とリイナを見比べて、慌てたような表情で叫ぶ。 「住み込み?って、鈴さんと二人暮らしなんですか?危ないですよ!」  京市の言葉に、鈴助は思わず茶を噴き出す。 「おいおい、危ないってどういう意味だ!」 「だって、若い男女が一つ屋根の下で暮らしてるなんて。あ、もしかして恋人ですか?」 「ちげーよ!俺はもう二十七だぜ?女子高生に手なんて出すかよ」 「女子高生?リイナさん、いくつですか?」 「私、今年で十七歳になるの。京市くんより一つお姉さんだからどんどん頼ってね」 ドンと胸を叩くリイナに鈴助は肩を竦める。 またリイナのお節介が始まった。 誰彼構わず世話を焼きたがるのはリイナの悪い癖だ。 先日もリイナがいなかったので昼飯をカップ麺で済ませたら 「ちゃんと栄養摂らなきゃダメだよ!」と叱られ、 トイレから手を洗わずに出れば「汚いよ、ちゃんと手を洗って!」と叱られた。 リイナは美少女で明るくて優しくて気も利くが、小うるさいのがたまに傷だ。 ときどき、家に肝っ玉母ちゃんがいるみたいな気になってしまう。 「気を付けろよー、京市。そいつ小煩いかーちゃんみたいな性格だからな」 「あ、リンったら酷い!そんなことないもん。ね、京市くん」 同意を求めるようにリイナが京市に微笑みかけると、 京市は顔を真っ赤にして小声で「はい」と頷いた。 どうやら、京市はリイナに弱いらしい。 まあ、それも最初のうちだけだろう。 リイナと長く過ごせば、そのうち彼女が母親に見えてくるに違いない。 「にしても、本当に暇だな。仕事もねーし、久しぶりにアレでもすっかな」 ソファに寝転がっていた鈴助は伸びをしながら立ちあがった。 鈴助の趣味はお菓子作りだ。 スイーツ男子の鈴助は、安上がりな手作りスイーツを作って、 思う存分甘い物を食べてストレスを解消する。 自分が食べるためじゃなく、たくさん作った時は、梢の喫茶店『花音』に スイーツをメニューとして出してもらって、こづかい稼ぎをするのだ。 それをしらない新入りの京市は、不思議そうな顔で鈴助を見た。 「あの、エプロンなんてつけて何を始めるんですか?」 「エプロンつけてすることなんて一つしかねーだろ?料理だよ、お菓子作りすんの」
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