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「へ?お菓子作りっ!?リイナさんは似合ってますけど、鈴さんがお菓子作りって、似合わなさすぎですよ」
気弱そうに見えて言いたいことをズバズバいう京市の暴言に、鈴助はむくれる。
「悪かったな、似合わなくて」
「リンは甘いもの大好きなんだよ。リンの作るケーキとかクッキー、すごく美味しいの!」
「へえ、意外ですね」
「どうせ今日はお客さんこなさそうだし、京市くんも台所へ行こうよ。お菓子作りしている時のリンもかっこいいんだよ」
「かっこいい……。そうですかね。まあ、戦っている時はかっこよかったですけど、ふだんの鈴さんをかっこいいとは言い難いです」
「うるせー、ほっとけ」
鈴助は自分ではけっこうイケているつもりだが、京市から見るとそうではないらしい。
確かに、京市は垢ぬけない雰囲気のせいで曇りがちだが、顔立ちは端正だ。
彼から見て、かっこいいいいと思えないことはそれほど気にすることではないように思う。
じっさい、鈴助は垂れ目で少し重たげな二重瞼に通った鼻筋と、
それなりにハンサムで通る顔立ちだが、
ふだんの覇気のない表情やがさつな態度のせいであまりもてない。
エプロンをして台所に立つと、鈴助はこの前の依頼で手伝いに行った牧場でもらった、
大量のヨーグルトやスライスチーズを冷蔵庫から出した。
作るのはチーズケーキだ。
チーズケーキは、鈴助が初めて作った思い出のスイーツだ。
思い出に浸りながらメレンゲを作っていると、京市が不審げな声をあげた。
「あの、チーズケーキですよね。その材料で作れるんですか?」
「大丈夫だぜ。クリームチーズなんて高級品がなくても、スライスチーズとヨーグルトがあれば、ケーキ屋のやつに負けねえチーズケーキができんだよ。まあ、見てろ」
「そうなの。リンの作るスイーツは庶民の味方だよ」
「庶民の味方ですか?ちゃんと、美味しくできるんですか?」
「味は保証するよ、京市くん、誕生日いつなの?」
「七月二十八日ですけど」
「じゃあその日は、リンにケーキ焼いてもらってみんなでお祝いしようね」
勝手に京市の誕生日の予定を決めるリイナに呆れつつ、鈴助は唇の端を吊り上げた。
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