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「しょうがねえな。人の誕生日覚えるなんて苦手だけど、覚えといてやるよ」
「ありがとうございます。それなら俺も、鈴さんの誕生日を祝わないと。いつですか?」
「いいんだよ、俺の誕生日は。めでたくもなんともねぇから」
「四月四日だよ。牡羊座なの。確かに、リンっていつも眠たそうな目しているし、頭も癖毛でむくむくで羊さんみたいだよね」
楽しそうにリイナが笑う。京市もつられて笑っていた。
「おら、口じゃなくて手ぇ動かせ」
リイナの細くてサラサラしたショートヘアを乱暴に掻き混ぜると、
鈴助はお菓子作りに没頭した。
チーズケーキを五つ焼きあげる頃には三時を過ぎていた。
一つだけ自宅用に残し、残りを梢の店に届けた。
ティータイムも終わりかけにショーケースに並べられたチーズケーキは果たして売れるのだろうか。
鈴助は若干心配だったが、その日の夜に、ケーキの売り上げを梢が持ってきてくれた。
「こんばんは、鈴さん。ケーキの売り上げ持ってきたわよ」
「おう、ワリーな梢。上がれよ」
「お邪魔します」
真田家の今は現在、遅めの夕食の真っ最中だ。
鈴助、リイナ、京市が三人仲良くマーボーナスとモヤシをたっぷり使った野菜炒めをつついていた。
「あら、食事中だったの。ごめんなさい。京市までごちそうになっちゃって」
「気にすんな。京市はただ働きだから、飯ぐらいいつでも食ってけ。オマエも喫茶店で忙しくて夕飯作る暇もねえだろーしな」
「ありがとう、助かるわ。あ、これ売上分ね」
梢が茶色い封筒を差し出す。早速封筒を開けると、一万円入っていた。
「おっ、けっこー入ってるじゃねぇか」
「全部完売したからね。評判良かったわよ」
「マジか?流石は俺。で、どんな奴が食べに来てた?スタイル抜群の美女とかもいた?」
やにさがった顔をする鈴助に、梢は眉間に皺を寄せる。
「もう、いやね、にやけた顔しちゃって。女子高生からOL、主婦とか色んな女の人が食べていったわ。あ、そうだ。女のお客さんだけじゃなくて、男の人もいたわよ」
「はあ、男?別に男の情報とかいらねーよ」
「そう言わないの。その男の人、懐かしい味だって言ってたわよ」
懐かしい味。
その言葉に鈴助は僅かに眉根を寄せた。
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