第一話 友との再会、オペラの悲劇

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「しょうがねえな。人の誕生日覚えるなんて苦手だけど、覚えといてやるよ」 「ありがとうございます。それなら俺も、鈴さんの誕生日を祝わないと。いつですか?」 「いいんだよ、俺の誕生日は。めでたくもなんともねぇから」 「四月四日だよ。牡羊座なの。確かに、リンっていつも眠たそうな目しているし、頭も癖毛でむくむくで羊さんみたいだよね」 楽しそうにリイナが笑う。京市もつられて笑っていた。 「おら、口じゃなくて手ぇ動かせ」 リイナの細くてサラサラしたショートヘアを乱暴に掻き混ぜると、 鈴助はお菓子作りに没頭した。 チーズケーキを五つ焼きあげる頃には三時を過ぎていた。 一つだけ自宅用に残し、残りを梢の店に届けた。 ティータイムも終わりかけにショーケースに並べられたチーズケーキは果たして売れるのだろうか。 鈴助は若干心配だったが、その日の夜に、ケーキの売り上げを梢が持ってきてくれた。 「こんばんは、鈴さん。ケーキの売り上げ持ってきたわよ」 「おう、ワリーな梢。上がれよ」 「お邪魔します」 真田家の今は現在、遅めの夕食の真っ最中だ。 鈴助、リイナ、京市が三人仲良くマーボーナスとモヤシをたっぷり使った野菜炒めをつついていた。  「あら、食事中だったの。ごめんなさい。京市までごちそうになっちゃって」 「気にすんな。京市はただ働きだから、飯ぐらいいつでも食ってけ。オマエも喫茶店で忙しくて夕飯作る暇もねえだろーしな」 「ありがとう、助かるわ。あ、これ売上分ね」  梢が茶色い封筒を差し出す。早速封筒を開けると、一万円入っていた。 「おっ、けっこー入ってるじゃねぇか」 「全部完売したからね。評判良かったわよ」 「マジか?流石は俺。で、どんな奴が食べに来てた?スタイル抜群の美女とかもいた?」 やにさがった顔をする鈴助に、梢は眉間に皺を寄せる。 「もう、いやね、にやけた顔しちゃって。女子高生からOL、主婦とか色んな女の人が食べていったわ。あ、そうだ。女のお客さんだけじゃなくて、男の人もいたわよ」 「はあ、男?別に男の情報とかいらねーよ」 「そう言わないの。その男の人、懐かしい味だって言ってたわよ」 懐かしい味。 その言葉に鈴助は僅かに眉根を寄せた。
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