4人が本棚に入れています
本棚に追加
『そこの二人……いえ三人かな。準備はいい?』
カオルから短距離指向性電波で、シグナルが入った。
「どれ、行くか」
プリーストがゆっくりと前進する。
周囲の空気が吸い込まれて行く。
プリーストの身体を構成する装甲の間隔が広がり、体格が二倍程に膨れ上がった。
「準備はいい? マリエル」
「ええ、多分」
この子は潔い。僕と気が合いそうだ。
『作戦スタート!』
プリーストが突進を開始した。
マリエルもその後ろに続いた。
*
村は廃虚と化していた。
動体反応も生体反応もなし。少なくとも生きている村人はいないだろう。
この村が戦略的に大した意味を持っていない事は、事前の分析で分かっていた。単に僕達をおびき出す餌でしかなかったのだ。
だが未完成とは言え『レッドナイト』が投入された。
何かあると思っていたんだけどな……。
「どうやら俺の出番はないな」
プリーストは溜め込んでいた空気を抜き元の姿に戻った。
「後は『オアシス』に来てもらって水を補給するだけだ」
「そうだね」
でも僕の中の『勘』が、まだ安心するなとアラートを発している。
「マリエル。水はどこ?」
「あそこの井戸」
マリエルが指差す。
そこには確かに井戸があった。
最初のコメントを投稿しよう!