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眼球に装備した投影レンズ。
それに映し出される目の前の光景。
縦5メートル、横5メートル75センチ、ほぼ正方形の通路が、31.672メートル先まで続いている。
この数字は正確だ。
センサーからのデータを、左脳に直結させたAIで処理した情報だからだ。
「アズル、前進します」
僕はマシーンを進ませる。
体高3メートル53センチのこの機械が入ると、狭い通路はいっぱいになってしまった。
『気をつけてください、アズル隊員。その地形では、援護は困難です』
耳に埋め込まれたチップから入る、指揮官からの通信。「了解しました」と返事をして、金属でできた通路を進む。2つの脚部を交互に前進させるごとに、ガシャンガシャンという振動が通路を揺らした。
「さて……」
31メートル先に到着した。
扉がある。
絵の具をぶちまけたように、電波反射剤が塗ってあった。これではセンサー類は通用しない。この先には何が“いる”のか分からない。
「行くしかないか」
ゴクリとつばを飲んでから。
僕は無線通信回線を開いた。
頭の中に展開されるコード入力画面。脳に直結されたAIのおかげで、どこかに指を触れることすらしなくていい。
ロックを解除。
扉が開く。
そして、その開いた扉から――
巨大な鉄球が、飛び込んできた。
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