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僕は、即座にマシーンを後退させた。
「やっぱりね」
扉を開けるこのタイミングで、敵が攻撃をしかけてくるのは当然のこと。間合いを確保して、最初から下がるつもりだったのだ。
マシーンの半身ほどもある巨大な鉄球でも、それは同じ。
軽くかわして、僕は通路の外を観察した。
「……A-58型か」
敵が通路に入ってくる。
潰れた人形のような、短足で胴の短い人型のマシ-ン。ただし頭がなく、かわりに、そこから長いワイヤーが伸びていた。それは鉄球に繋がっており、ワイヤーを巻き取ると、鉄球は頭の位置へとおさまった。
「厄介だな……」
ワイヤーつきの鉄球を装備したこのマシーンは、工事用の重機だった。
“体格”こそこちらとほぼ互角だが、重さが違う。すれ違えないほどに狭いこの場所では、それはとても有利に働くだろう。
「こっちは軽作業用なのにさ」
正面衝突など出来ない。でも、だからこそ僕は、正面からマシーンを突っこませた。
敵は、「やった」と思うだろう。
こちらを「バカだ」と考えただろう。
だから馬鹿正直に対応してくる。
「ほらな!」
鉄球は真っ直ぐとんできた。
【時速160キロ――重さ0.5トン――】
計測結果から、AIが数パターンの対応を提示し、僕はそれを選択する。
鉄球が当たるまでの1秒にも満たない時間でそれができるのは、マシーンの制御システムと僕の脳が、AIを通じて直結されているからだ。
僕が選んだのは、マシーンをジャンプさせることだった。
「はっ!」
飛び上がって。
背中を天井につける。
それを支えに、右アームを振りかざす。
【斜め上47度】
AIが計算した角度で鉄球を叩き、軌道を逸らした。
「よぉし、前進だ!」
この通路はすれ違えないほどに狭いが、それはマシーン同士の場合。鉄球だけなら、鉄球のなくなったマシーンだけなら、話は別だ。
敵の最大の武器は、僕の背後でバウンドした。
あわててワイヤーを引き戻そうとしても、もう遅い。
僕の操縦するマシーンは、相手の上にアームをついて飛び越え、敵の背後に回ることに成功してた。
「カイロナイフ!」
マシーンの胸に装着されたポッドから、小型のナイフのようなものが発射された。
狙いは敵の背中、電動モーターだ!
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