洋人と圭介

13/15
前へ
/70ページ
次へ
ストローで勢いよくこの飲み物を啜ってみたものの、俺の口まで到達するのに時間がかかる。 到達した瞬間、コーヒーのほろ苦さとチョコレートの甘さが口いっぱいに広がる。 「うま!」 俺は思わず声が漏れる。 それを相変わらず穏やかな笑顔で圭ちゃんが眺めている。 「だべ。都会は好きでねぇが、美味いコーヒーは飲みたいんだよなぁ。」 俺はなんちゃらペチーノを飲みながら、目の前の圭ちゃんを見やる。 整った目鼻立ちにキューっと上がる口角と、コーヒーカップが小さく見える程の大きな手。 それを隠すメガネだけが少し違和感を覚えるけれど、このおしゃれな空間で穏やかな笑顔でブラックコーヒーを飲む姿がとても様になっている。 「圭ちゃん、都会の人っぽい。」 俺は思わずまた、思ったことを口にしてしまう。 その言葉を聞いて、圭ちゃんは整った顔を少し歪ませて苦笑いした。 「何言ってんだ。おめと同じ町さ住んでんべ。」
/70ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加