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ストローで勢いよくこの飲み物を啜ってみたものの、俺の口まで到達するのに時間がかかる。
到達した瞬間、コーヒーのほろ苦さとチョコレートの甘さが口いっぱいに広がる。
「うま!」
俺は思わず声が漏れる。
それを相変わらず穏やかな笑顔で圭ちゃんが眺めている。
「だべ。都会は好きでねぇが、美味いコーヒーは飲みたいんだよなぁ。」
俺はなんちゃらペチーノを飲みながら、目の前の圭ちゃんを見やる。
整った目鼻立ちにキューっと上がる口角と、コーヒーカップが小さく見える程の大きな手。
それを隠すメガネだけが少し違和感を覚えるけれど、このおしゃれな空間で穏やかな笑顔でブラックコーヒーを飲む姿がとても様になっている。
「圭ちゃん、都会の人っぽい。」
俺は思わずまた、思ったことを口にしてしまう。
その言葉を聞いて、圭ちゃんは整った顔を少し歪ませて苦笑いした。
「何言ってんだ。おめと同じ町さ住んでんべ。」
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