洋人と圭介

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ここはリアス式海岸が広がる港町。 拓未は「磯臭いのが嫌いだ。」って言ってるけれど、俺はこの潮の匂いが好きだ。 海から風が吹き込んで、高台にある家まで磯の匂いを運んでくる。 海は今日も穏やかだ。 振り返ると、番犬のはずのムクがのんびりとあくびをしながら寝そべっている。 そんなムクから目を離そうとした瞬間、垂れていたムクの耳がピンッと立ち、鼻をクンクンしたかと思うと急にせわしなく吠え出した。 何事かと思って、座っていたプラスチックのビール瓶ケースから立ち上がると、国道から家までの坂道を勢いよく走ってくる白い軽ワゴンが目に入った。 白い軽ワゴンは遠慮なしに家の敷地へと入ってくると、駐車場など御構い無しに俺の前で停まった。 その間中もムクは威嚇しながらずっと吠え続けている。 エンジン音が切れると同時に運転席のドアが開き、圭ちゃんが勢いよく降りて来た。
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